神去村なあなあ日常 映画化記念 読書レビュー Ⅱ
今日は 第二章です。~ 神去の神さま~
私自身林学を学んでいた。とは言っても、この作中のような林業ではなく、樹木の病理や防風林の専攻だったのだが。それでも急勾配の山や大雨の中での作業を思い出し、また実家も神去村のような雰囲気なので読んでいて懐かしくもある。
一次産業全てに言える事だが、先祖代々のやり方をただ続けて行くだけでは通用しなくなっている。神去村は時代に置き去りにされた村に見えて、それでも林業を続ける地元の若手(田舎では40代も充分な若手)がいるのは、次代に繋ぐ経営をしている証拠だ。地ごしらえや間伐、伐採などはどれも山を守り、かつ木材を生産するのに重要な工程だ。
日本にとって必要な産業であり、大変な肉体労働であるのに収入は不安定。
それを承知で自然を相手にそれぞれの工程を得意とする職人が中村林業にはいる。
その中でも抜きん出て腕がいいのがヨキだ。ヨキは破天荒で、家庭を持った30代なのに言動はまるで中学生だが、腕の良さで誰からも一目置かれている。
そして、大地主たる清一が職人たちを主導しているのも大きい。
清一は三重西南部の大地主なのもあり、日本の山林の保護に一段と力を入れている。
実在の林業家達も、経営努力技術の研鑽を積み重ねているのだと窺える。
二章は読んでいるだけで体がむずむずしてしまう春先の杉山の花粉地獄から、
最初にイメージした神がかった描写が登場する。
清一の子山太が行方不明になり、村人たちは神隠しだと騒ぎ立てる。
折しも、その年は「オオヤマヅミさん」の大祭の年だと言う。
清一の子はオオヤマヅミさんが住むと言われている神去山で無事に見つかったが、
子供の足ではまず行けない山までどうやって来てしまったのか、
山太を連れて行った2人の女とは、オオヤマヅミさん、神去山。
その山へ入る時の男たちの禊。そして、勇気の淡い恋の相手の謎も惹き込ませる。
謎めいた女性直紀は美人であるが素っ気ない。
勇気が直紀への感情をどう決着付けるのかも見守っていきたい。
つづく